喫煙している方の7割はニコチン依存症という病気
ニコチン依存症は治療が必要な病気です。また、ニコチン依存症ではない3割の方にとっても、数千種類の化学物質や数十種の発がん物質が含まれていて、血管にダメージを与え続けるタバコを止めることで、健康上の大きなメリットがあります。また、禁煙は大切なご家族の将来的な病気リスク軽減など、健康にも大きく役立ちます。
禁煙治療では、禁煙しやすくするお薬の処方に加え、効果的に気持ちをタバコからそらす方法などを具合的にお伝えしながら無理なくできる禁煙方法を探していきます。いわば、医師と二人三脚で禁煙を実現していく治療です。
禁煙治療について
標準的な禁煙治療のスケジュールは、12週間(3ヶ月間)にわたり合計5回の診察が行われます。
初回診察でじっくりお話をうかがい、禁煙資料についてご説明します。実際に禁煙がスタートするのは初診から8日後です。
2回目の診察は2週間後、それからは4週間後、8週間後、最後は12週間後の診察です。
診察予定日よりも受診が遅くなった場合、保険診療が受けられなくなりますので必ず予約日にいらしてください。
診察内容は、ご相談やアドバイスを行う問診、呼気一酸化炭素濃度の測定、禁煙補助薬の処方です。呼気一酸化炭素濃度の測定は診察時に毎回行います。一酸化炭素はタバコの煙に含まれる代表的な有害物質であり、禁煙を始めることにより、この数値が低下します。数値として目に見える形で改善されていくことが励みになり、次回の測定が楽しみになる患者様も多いです。5回の禁煙治療を受けて禁煙治療を成功させる方は80%以上です。
また、たとえ治療中にうっかり喫煙してしまった場合も治療を続け、結果的に禁煙を成功させた方も少なくありません。禁煙治療はあきらめないことが重要です。いっしょにゴールを目指して完走しましょう。
健康保険で禁煙治療
アキ循環器・血管外科クリニックでは健康保険適用の禁煙治療を行っております。健康保険で禁煙治療を受ける場合、「禁煙治療を受けるための条件」の4つの条件点を満たすことが必要です。例外として35歳以下では、この条件を満たしていなくても禁煙治療を受けることができます。
ただし、健康保険を使った禁煙治療は、決められた医療機関でしか受けられません。当院は、禁煙治療を健康保険で受けることができる医療機関ですので、安心していらしてください。 なお、以前に1度、禁煙外来で治療を受けて禁煙に失敗している場合は、前回の治療の初回診療日から1年が経過していれば保険診療で再度の禁煙治療が可能です。また、自由診療であれば、1年が経過していなくても治療を開始することが可能です。
禁煙治療を受けるための条件
- ニコチン依存症を診断するテスト(TDS)で5点以上
- 1日の平均喫煙本数×これまでの喫煙年数=200以上(35歳以上の場合のみ)
- 1ヶ月以内に禁煙をはじめたいと考えている
- 禁煙治療を受けることに文書で同意している
うつ病治療中の方は担当医師の許可が必要になります。
車の運転をする方はニコチンパッチでの治療が可能です。
ニコチン依存度テスト(TDS;Tabacco Dependence Screener)
ニコチン依存症を最終的に診断するテストは診察時に医師が結果を判断します。保険適用はニコチン依存度テストが5点以上、さらにニコチン依存症であると医師が診断することが条件です。
ニコチン依存度テストの内容は下記の通りです。
「はい」か「いいえ」でお答えください。はい1点/いいえ0点
- 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか?
- 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか?
- 禁煙したり本数を減らそうとした時に、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか?
- 禁煙したり本数を減らそうとした時に、次のどれかがありましたか?
- うかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか?
- 重い病気にかかった時に、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか?
- タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?
- タバコのために自分に精神的問題(*)が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?
- 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか?
- タバコが吸えないような仕事や付き合いを避けることが何度かありましたか?
注*この「精神的問題」は、喫煙することにより神経質になったり、不安や抑うつなどの症状が出現したりする状態を指します。禁煙や本数を減らした時に出現する離脱症状ではありません。
禁煙治療で処方される薬
禁煙後のイライラや集中力の低下といった離脱症状を抑えることで、禁煙をサポートする貼り薬の『ニコチネルTTS』という禁煙補助薬を処方します。
禁煙成功率は、薬を使用しない場合に比べ、1.7倍になると報告されています。
※内服薬「チャンピックス」は発癌性物質が見つかったため製造中止になっており、現在は貼り薬のみの治療となっています。
治療中にタバコを吸ってしまった
禁煙治療中にうっかり喫煙してしまった方でも、そのまま治療を続けて治療終了時には禁煙が成功したケースもあります。需要なのはタバコを1本吸ってしまったからすぐにあきらめてしまうのではなく、その体験を踏まえた対処方法を検討していくことです。喫煙してしまったとしても、禁煙治療を継続してよりご自分に合った禁煙方法を見つけることが可能ですので、遠慮なくご相談ください。
電子タバコについて
ニコチンが含まれていない電子タバコもありますが、ニコチンが含まれている場合には依存性があり、喫煙リスクがあります。また、受動喫煙によるリスクも否定されているわけではありません。
またニコチンを含まない電子タバコでも、種々の発がん性物質や炎症誘起物質が含まれている場合があります。電子タバコとして使った場合の安全性が医学的に立証されていない成分が大半を占めており、各種のがんや慢性肺疾患を起こすリスクがないとは言えません。煙や匂いがないことから受動喫煙に気付きにくく普通のタバコより危険性が高いという見方もされています。
電子タバコは禁煙補助剤の代用品としておすすめできるものではありませんので、できるだけ控えてください。
禁煙治療費用について
保険適用3割負担の場合
ニコチンパッチによる治療の場合(3ヶ月間) | 13,000円前後 |
薬の処方がなく、診察とカウンセリングのみの場合には、6,000円以内を目安としてお考えください。
タバコは1箱が約400円程です。1日1箱の喫煙で2ヶ月を60日換算すると、タバコ代は24,000円になります。喫煙を続けるより、禁煙治療を受ける方が費用は少ないのです。また、禁煙治療で禁煙に成功した場合、以降は将来的にずっとタバコ代が必要なくなります。